アガイ研ブログ

Agai(堕武者+ultraviolence+)の個人ブログです。主に将棋、音楽、プロレス、レトロゲームについて書きます。将棋界では練習対局のために集まることを「〇〇研」と称することが多いことから、タイトルに名付けました。

レトロゲームDJ(@麦酒夜宴)準備段階編

 (先にセットリストだけアップしたものはこちら)

それでは、ライナーノートというか、オファーをいただいてからセットリストの作成、当日までの工程を記していきたいと思います。半分は自分のための反省会です。

オファーをいただいてから出演を決定するまで

主催のうーぴー様から連絡をいただいたのは7月下旬のことでした。

昨年7月の麦酒夜宴では、将棋を指しながらラップバトルを繰り広げるという「ハードコア将棋ラップバトル」で新境地を開拓しようとしたものの、台本の遅れから歌詞や練習でメンバーに突貫工事を強いた結果、当日は空中分解してしまい、演者の機転と温かいお客さんの助けで何とか形にはしたものの、皆で用意した面白さの半分も出せない結果となってしまいました。

にもかかわらず、再度のオファーをいただいたことを意気に感じ、何とか挽回のチャンスを得たいと思いました。

ただ、堕武者は1年間お休みしている状態。準備期間は2か月半あるとはいえ、その1年間で体調を崩し、ようやく回復の兆しが見えてきた自分に、大所帯のプロジェクトを進める余裕はおそらくない。

結局1週間考えさせていただき、ソロ出演としてオファーを受けることにしました。

ネタの基軸となるのは、2016年12月に山根さんからお誘いを受け大阪へ単身遠征して行った、パワーポイントでフリップ芸的な笑いを取りながら、適宜カラオケ歌唱を混ぜていくという手法です。

パワポ芸は、サラリーマン生活を長く続けている自分にフィットするフォーマットなので、いつかまた演じてみたいと思っていました。

題材決定まで

 基本フォーマットをパワーポイント芸に定めたら、次は題材の決定です。

大阪では堕武者の曲を、ボーカルを抜いたトラックを流しながら歌いましたが、今回はソロプロジェクトです。別にソロでも堕武者の曲を使っていけないことはないのですが、私にはやりたいことがもう一つありました。

それが、マイナーなレトロゲームの面白さを解説しながら曲を流すDJです。

これまでも、ハードコア将棋の、あるいはDJのオファーを受けて出演した、高円寺CAVEでの「DJサロン」や「ちゃんたく☆ないと」、あるいは大森Ain't NO#での「CLUB-D」で、レトロゲームを扱ったことはありました。

ただこの時は、フロアで流す音楽の方向性が中々定まらず、客層にフィットしないと分かっていながら、自分が一番ストーリーを描きやすいレトロゲームに頼ったという事情があります。

言い換えれば、他のジャンルで―特に、フロアの客層が喜びそうなジャンルを下手に選択すると―かえって底の浅さを露呈してしまうのではないか、という恐れがありました。

レトロゲームにあまり詳しくない客層だからこそ、「細かくて伝わらないモノマネ選手権」の「〇〇スターシリーズ」のような、知らない事の面白さが出るのでは?と考えたのです。

それはそれで一定の効果を得たのですが、やはり一度は、客層の大半がゲームに親しみのあるフロアで、堂々と自分の知識や思い入れをひけらかして勝負したい、という気持ちがありました。

そこで思い出したのが、ゲーム音楽作家の「来兎(らいと)」さんが出演した時の麦酒夜宴です。

来兎さんが次々と繰り出す、90年代~00年代のシューティングゲームの名曲の数々にフロアはすっかり沸いていました。

また、懐かしい楽曲の数々から、フロアのあちらでも、こちらでも往時の思い出話に花が咲き、自分もエスプレイドストライカーズ1945の話をしながら「これはイケる」と思いました。

こうして、自分の一番自信のある「レトロゲーム音楽」を、出し物の基本軸にすることが決まりました。

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ネタ集めの楽しさに溺れる

さて、題材が決まったら、次は流す曲を集める必要があります。

とりあえず、好きなゲーム、好きな楽曲、印象に残っている曲を片っ端からエクセルシートに書き出していきました。この作業が一番楽しく、エクセルの行がどんどん埋まっていきます。

これは堕武者の台本を書いている時も全く同じで、個別の笑いどころ、スポットを考えている時が一番筆が進みます。

本当は、まず全体の尺を意識して、序盤〇分、中盤〇分、終盤〇分に最終盤〇分…などと分け、さらに時間を小分けにしてそれぞれの場面で何曲入れられるかを計算していくのが、出来上がりとしては一番早く、かつ整合性も確保できる…とわかってはいます。

ビジネス文書作成指南書にも「逆算して書け」とよく書いてありますね。

あるいは、ネタになりそうな要素を徹底して書き出し、全体を構成する要素を徹底的に洗い出してから書かないと、途中で行き詰ったときに修正が利かない…

というのも、同じく文書作成講座などでよく聞く話です。

しかし、私はこの二つがどうしてもできませんでした。

ネタがどんどん膨らんでいくのも楽しいし、途中で本筋を離れて、ネタ同士を結び付けて化学反応が起きるのも楽しい。

結局、箇条書きにした楽曲は100曲近くにのぼりました。

そして、現在持っていないサントラCDや、楽曲が音源化されていない場合はゲームソフトを求めて秋葉原や中野を徘徊。この旅路もまた大変楽しく、極端なプレミアが付いた作品には手が出ないものの、10代の頃には手に入らなかった思い出のCDやカートリッジを前に、トレジャーハンター的な快感がどんどん満たされていきます。

ファミコン芸人のフジタ氏が、自らのYouTubeチャンネルで「市場価値より値段が安いソフトを発見したら、既に持っていても「市場価値より安くてお得だから」という理由で買ってしまう」という意味のことを語っていましたが、そのコレクター心理に触れた思いです。

もちろん本当は中古ではなく、現在権利を保有している会社に正統な利益が入るように買うのが一番望ましいのですが…

ともあれ、片っ端から手に入れた音源をiTunesで取り込み、ジャンル別に分け、紹介のストーリーを作り、曲を流す順を決めていきます。そこでハタと気づく。

忍び寄るネタ削りの恐怖

最初から分かっていたことですが、「脱衣麻雀」「ヴァリス」など、一束ずつジャンルで括って最後に全て時間を足した結果、束の数は6個、全部流せば80分を超え、持ち時間の倍となるボリュームのどうしようもないセットリストが出来上がりました。

普通はこうなる前に、例えば全部は入らないから束の数は3つまでにしようとか、いろいろな予測を伴って計算をすると思うのですが、私の場合、とにかくまず思いついたネタを全部書き出し、場面(束)ごとに大まかな進行を定めてからでないと、ネタや場面の取捨選択ができないのです。堕武者の台本を書いていたころからの悪癖はここでも解消できませんでした。

これに気付いた時は、既に9月下旬。パワーポイントの作成を考えると、構成は既に完成していないといけない時期です。

とりあえず、私はTifaraに泣きつきました。堕武者最初期からのメンバーであり、私の性格を知り尽くしている彼は、巣鴨のファミレスでグジグジと語る私の話を聞いてくれました。

ネタごとの束を一瞥して、彼が出してくれた意見はふたつ。

「俺はこれが一番興味がある」と示してくれたのが「脱衣麻雀BGM研究」で、

「お前が一番興味があるものは?」と問われて、私が選んだのが「ヴァリスシリーズ」でした。

良く考えてみると、あとのネタ束は、曲は大好きだけどゲームは実はそれほどやり込んでいなかったり、ゲームへの思い入れよりもウケ重視で曲を選択していたりで、それが悪いとは言わないまでも、何がしかの迷いを抱えている内容でした。

「迷ったら原点に帰る」というのは大切だと、この時改めて思いました。

(自分の中だけで)選び抜かれたネタたち

こうして、

  1. オープニング
  2. レトロゲームを紹介する理由の説明
  3. 脱衣麻雀
  4. ヴァリス
  5. エンディング

という、全体の流れがようやく確定。

個々の内容のブラッシュアップに入っていきます。

1.オープニング

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オープニングトラックとして用いた「PCエンジン警告トラック」ネタは、実はもう10年以上前、確かサウンドクリエイト研究会所属時代に1回だけ使ったネタ(おそらく大学祭)です。

あの、やたら発音がよいお姉さん(シーディー、ではなくスゥイーディー)が、少し強い口調で「止めてください」と畳みかけるトラックはかなり怖く、小学生当時は結構なトラウマとなっていました。

しかしお気に入りのゲームの曲は四六時中聴いていたいので、何とか1曲目を再生しないように、細心の注意を払ってCDウォークマンを操作していたことを思い出します。

今回久しぶりに聴きましたが、やっぱりちょっとビクッとしますよね。

これを何度も繰り返したら絶対クセになると思いました。

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なお、オープニングのパワポは、音楽に合わせて手元のコントローラーで手動でページを繰っているので、私の体の動きと微妙にシンクロしているように見えるのでした。

プロモーションビデオを人力で行っているようなものですね。

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「セバスさん(片霧烈火さんのステージでピアノを務めたSebastian氏)結婚おめでとう」

クリックを連打する必要画あるシーンなので映ったのは一瞬でしたが、気付いてくれた方がいて嬉しかったなあ。

2.レトロゲームを紹介する理由の説明

さて、自分の中ではレトロゲームを題材にすると決めたものの、なぜこのイベントで、麦酒夜宴でレトロゲームに絞ったDJを行うのかは自明のことではありません。

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もちろん「自分が好きだから」でもいいのですが、堕武者で色々な台本を書いた経験から、「そのイベントの特性を生かしたネタ作りをすると、観客を飽きさせにくい」ということを何となく理解していたので、牽強付会でもいいので何か理由が欲しい。ということで思いついたのが、あの「時流・地場・磁場」のネタでした。

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こんなネタを許していただけるのも、麦酒夜宴に集まる皆さんがこのイベントを心から愛し、楽しんでいるからだと、改めて思います。

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ここまで書いて既に4000字近くなってしまいました。

大好きなゲームの大好きな楽曲について必死に説明していたら、何と作曲者ご本人が乱入して当時の裏話を披露していただいた話とか、日本テレネットへの愛憎入り混じる私の思い入れとか、肝心な話がまだ何も書けていませんが、続きは次回の投稿で。

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