アガイ研ブログ

Agai(堕武者+ultraviolence+)の個人ブログです。主に将棋、音楽、プロレス、レトロゲームについて書きます。将棋界では練習対局のために集まることを「〇〇研」と称することが多いことから、タイトルに名付けました。

ADHDが札幌へDJしに一人で旅行してみた【怒涛の会場入り~反省だらけの出番編】

絶妙の場所に宿泊することに成功していた

前回のブログで記したとおり、七転八倒しながら札幌地元民に愛されるスープカレーを食べることができた堕武者Agai。

agailaboratory.hatenablog.com

爆速で宿へ引き返し、物販と機材でパンパンに膨れ上がったスーツケースを手に取り、踵を返して本日の会場「CLUB ANiMA」へと向かいます。全力ダッシュでGO!

そして即到着!

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その間2分。我ながら素晴らしい場所に宿を取ったものです。

CLUB ANiMAの扉。出演者としてハコの扉を開ける瞬間は、何度体験しても緊張するものです。

集合時間の少し前に到着して、すぐ店内に入るかどうか逡巡していたところ、道の向こう側から本日のDJ陣のひとり・みつばさんが登場。お顔を拝見できて緊張が和らぎます。みつばさんは本日札幌でDJをされた後すぐに地元である福島へ飛び、ご自身がオーガナイザーを務められる東方DJイベント「東方福酔宴」に出演されるのだとか。底なしのバイタリティに頭が下がります。

ややあって会場の扉を開け、地下へ降りていきます。

会場のスタッフ様や、続々と到着される出演陣・お手伝いの皆様とあいさつを交わしていくうちに集合定刻の13時となり、顔合わせのミーティングが始まりました。

免罪符

私はミーティングの冒頭で「東方でDJをするのは今回が初めてですが、精一杯盛り上げたいと思いますのでよろしくお願いします」と挨拶しました。

堕武者を以前から追っていただいている方はご存じかもしれませんが、私が初めてDJブースに立ったのは2013年の12月、大森のダイニングバー「ain't NO#」で月イチ開催されているロックDJイベント「CLUB-D」のことでした。イベントを主宰するDie=SukeさんがM3フリースペースでの堕武者演劇に出ていただいた縁でオファーをいただき、1~2年に1回のペースでお呼びいただいています。

なので、決してターンテーブルの前に立つのが初めてな訳ではないのですが、初めての東方イベント、初めての会場、初めて身内の方々以外の前でプレイする、ということで、緊張はこの時点でかなり高まっていました。

そして、この時点で「初めて」を名乗っていたことが、後で重要な意味を持つことになります。

そしてサウンドチェックがスタート。私の場合、ターンテーブルからの音出しの他に、PCからプロジェクターへの出力も確認しなければならないので、確認事項が多く、この時点で若干焦りが始まっています。

しかもさらに悪いことに、私はひとつ、DJとして致命的な忘れ物をしていることに、ステージに上がって音出しの順番待ちをしている際に気付いたのでした。

「自前のヘッドホンがない!」

Image with no description

昨年11月、CLUB-Dでプレゼン型DJ(スケッチブックVer.)を行う私。ヘッドホンはブースに据え置かれていましたが、ガチガチにセトリを固めるスタイルの私は使ったことがありませんでした。そのくせ、「ヘッドホンはDJブースに据え置かれているもの」というイメージだけが残っておりました。

そう、私は過去のDJにおいて、曲のフェードイン/アウトのタイミングをガチガチに決めて、メモを作って実践するスタイルだったので、曲の頭出しをするという作業が不要でして、従ってヘッドホンも使ったことがありませんでした。

今回の出演にあたり、曲の途中からのカットインなどクロスフェード以外のつなぎ方を行うにあたっては厳密なCUE打ち(頭出し)が必要となったので、スタジオでの練習ではヘッドホンをレンタルして使ってはいましたが、自前のヘッドホンを現場に持っていかなければならない、という事態に、リハでステージに上がるまで全く気付いていませんでした。あれだけタスクリストを時間かけて作ったのに……

動揺する私。しかし、そんな私に救いの手を差し伸べて下さったのは、みつばさんでした。ヘッドホンをお借りしてよいか尋ねるとご快諾を頂戴し、何とか恰好をつけることができたのでした。改めまして、本当にありがとうございました。

サウンドチェックですべきだったこと

そんなことをしつつ、音出しはいよいよ私の番に。今思えば、せっかくプレイ時の注意事項を曲順リストに色々記載していたのだから、それをサウンドチェック時の確認事項リストとして活用すればよかったな…という反省があります。

この時、私が確認していた事項をまとめます。

この日のミキサーはPioneerのDJM-750MK2(多分)。スタジオ練習で扱っていたものと(多分)同じだったと思うのですが、もう音出しの時点で頭が真っ白でした。

・左右のCDJがミキサーにおいて、左がA、右がBにかアサインされているか確認。アサインされていなければ自分で設定する。CLUB ANiMAのミキサーでは4チャンネルすべてがTHRU(どこにも設定されていない)状態だったので、自分で設定し、自分の音出し後は元に戻す作業が必要だった。

・クロスフェーダー(横フェーダー)のモードは曲線になっているかを確認。

この二つは現場でも何とか確認できましたが、この他にも

「再生ボタンを押す際は、縦フェーダーがゼロになっていないか、横フェーダーが反対側のマックスになっていないか注意」

「次の曲の頭出しをする際は、縦フェーダーを必ずゼロに」

「再生曲順は必ずチェック。疲れてくると何も考えずにTr1から流してしまうので注意」

CDJには、ゼロ秒からの無音部分を自動的にカットするモードと、しないモードがある。現場のCDJがどちらのモードになっているか注意」

など、気を付けなければならないことはいくらでもあります。ADHDでなくても混乱する細かさかもしれません。

シンプルな結論「練習不足」

大きな反省と気づきの一つとして、一連の作業を遺漏なく行うためにはとにかく練習による慣れが必要で、私が練習した8時間(2時間、3時間、3時間の3日間)では全然足りなかったということですね。

将棋でもそうですが、「頭で考えるより先に、手がそこへ行く」という状態に自らを持っていくためには、シンプルな反復練習が何よりも必要で、そのためには、自宅にDJ環境を構築することが、時間面でも金銭面でも最適解だと思いました。

都内のスタジオで3時間練習すると約6,000円かかり、往復の交通費で2,000円弱かかりますからね。スタンダードなPCDJコントローラーを買ったほうがよほど効率がよいうえ、CDのようにトラック数を間違えて再生するということもありませんし、ディスク入れ替えの手間もない。

私は今まで、せっかくメディアとしてのCDを大量に所有しているのだから、これを活かすためにもCDでDJやるのがいいのではないかと思っていましたが、この日の東方鋼鉄狂におけるDJ陣の中で、CDを持参していたのは私だけ。あとはUSBメモリ持参のDJと、PCDJ持参のDJが、それぞれ3人ずつでした。

もちろん、データとして所有するのに比べて、CDにはCDの良さがありますが、ことDJに関しては、あまりそこに拘るよりは、利便性を重視してよいのだと考える用になりましたね。

「何もいじってないのに!」

話がだいぶ逸れましたが、兎にも角にも音を出さなければなりません。

右のCDJに1曲目のCDを入れて、左のCDJに2曲目のCDを入れる。CDJのミキサーへのアサインをチェックし、縦フェーダーと横フェーダーをチェック。まず右を再生して音が出るか確認、続いてクロスフェードで左のCDを再生。

……この時点では、どちらのCDもしっかり鳴っていたんですよね……

結論を先に書くと、本番では左のCDが鳴らず、私は音を止めてしまうことになりました。ゲインも上がっていて、縦フェーダーも上がっていて、横フェーダーも100%左に振っている。なのに鳴らない。1曲目の、本来ここでカットインするとカッコいい!という場所はどんどん過ぎて行って、とうとうアウトロが来て、やがて曲が止まってしました。

借りているヘッドホンなのに本当に申し訳ないことですが、脂汗が脳天から滝のように流れてきます。

動画で確認すると、異変を察知したわらびさんが、すぐにステージに駆け上がってミキサーをチェックしてくれました。ややあってみつばさんや湊さん、そーげつせーさんも駆けつけてくださいました。

動画で確認すると、と書いたのは、現場では完全にテンパっていて、ミキサーしか視界に入らなくて、誰がどこに来てくれたのか全く分からなかったのです。

どこをどう修正していただいたのか、恥ずかしながら私にはまったく分からなかったのですが、数分後、とにかく左のCDJから音は鳴るようになりました。3chのゲインがツマミは回っているのに反応していなかったという状態もあったようですが、真相は不明です。自分のことなのに申し訳ありません。

とにかくにも、助けていただいた皆さんに心から感謝です。

力になれ、俺のこれまでの最低な経験たち

本当はもっと、然るべきタイミングで流したかったとっておきの1曲、Foreground Eclipseの「Obstruction! Color It All Out」を流しながら、「なんで今まで散々準備をしてきて、本番でこんなことになってしまったんだ」という悔恨の気持ちで一杯になっていました。が、そんな不甲斐ない背中を蹴り飛ばすかのように、マイクから声が突き刺さります。

「えー、Agaiさん、今回初DJでございます。どうか皆さん、温かい目でご覧になってくださいよろしくお願いします。……Agaiさんよろしくう!!」

実はこの時も周囲が全然見えていなかったので、このセリフを誰が言ってくれたのかすぐには分からなかったんですね。動画を見返して、わらびさんだと気付いた次第です。

声の主は分からないながら、ここで私は我に返ることができました。

そうだ、まだ持ち時間はたっぷり残っている。最初の動画ネタと、次の太鼓ネタ(「奇稲田姫」を流しながら、締太鼓を肩に乗せて叩きまくりました)についてはある程度のウケも得ている。挽回のチャンスはあるはずだし、もしそれが潰えるとしたら、演者である私が観客に背を向けて、心を閉ざしてしまった時じゃないか。

 

今まで、ライブで大きな失敗は数えきれないほど犯してきました。ライブ当日になっても曲の構成が決まっておらず冒頭以外完全アドリブで滅茶苦茶やったり、PCとサンプラーMIDI同期の方法が分からなくて同時に再生ボタンを押す力技を試みて音ズレが酷かったり、ネタの大オチに必要な小道具をそもそも用意していなかったことに本番が始まってから気付いたり、客層を完全に読み違えて下ネタサンプルの連打でダダ滑りしたり、M3フリースペースで用意したスピーカーからの出音が周囲にかき消されて後方の観客には全く聞こえなかったりと、枚挙に暇がありません。

そんな時でも、失敗に必要以上に動揺したり、諦めたり、ふてくされたりすると、観客はいよいよステージに期待を向けなくなります。逆に、トラブルがあっても、なおその場で出来ることを精一杯やり、また演者自らが楽しんでその場にいることさえキープすることができれば、その肝の据わり方はフロアに伝播し、結果としてお客さんを喜ばせることができるという経験を何度もしてきました。もちろん、終わったあとは真っ先に後悔の念が全身を貫くのですが、それは仕方のないことです。

麻雀放浪記にはこう書かれていました。「勝負の最中に反省する奴は勝てない」と。

己のミスに失望して委縮するよりは、開き直って残りのパフォーマンスに全力を注ぐほうが、よほど生産的ですね。

これは私が逆を持った場合、つまり客としてフロアにいて、ステージでトラブルが起こった場合にも実感することです。

いつだったか渋谷のDESEOで観たライブで、打ち込みを流す用のCDプレイヤーがうまく作動しなかったバンドが、そのまま1曲もまともに演奏しないで帰っていったことがありました。ギターボーカル、ギター、ベース、ドラムと一通り揃っているバンドだったので、打ち込みなしでも曲をやればいいのになあ、完璧でなくても今できることをやればいいのに。と思ったことを覚えています。

反対に、明らかな準備不足でステージに上がったバンドでも、演奏に力と魂が込められていれば、アラ探しよりも長所を探すモードに観ている側としては切り替わるので、終わった後の満足感は十分に得ることが出来ます。

「Agaiさんよろしくう!」と背中を押された直後、フロアに降りて無理やりサークルモッシュを作りながら、そんなことを必死に思い出していました。

改めまして、わらびさんを始めして助けていただいた出演者の皆様、本当にありがとうございました。

そして、音が止まっている間、ヤジも飛ばさずに温かく待って下さり、プレイが開始されたら再び音に身体を預けて下さったフロアの皆様、本当にありがとうございました。

冒頭にも大きなミスがありました

ミキサーの話からミスの話に入ってしまったので書きそびれましたが、実は私の出番では、冒頭のSEから本編一曲目に行く際にも大ミスを犯していました。

PCから流すオープニング動画から、CDJから流す音源への切り替えを失敗

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この動画の一番最後、そらまめ。様の「ああ~~~っ!!」と一緒に私も「ああ~~~~っ!!」と叫び、そこからUNDEAD CORPORATIONの「奇稲田姫」冒頭で男性が叫ぶ「ああ~~~~っ!!」に繋げるという、最高にクールな開幕に至る筈だったのですが、なんと音が鳴らない。何度再生ボタンを押しても音が出ない。ふと見ると、3ch(右側のCDJアサインされている)の縦フェーダーがゼロになっている。慌ててフェーダーを上げる。すると中途半端な位置から曲がフロアに流れ出す……

これは完全に、防げたミスですね。先ほども書いたとおり、再生する直前の縦フェーダーと横フェーダーを確認するのは基本中の基本です。

リハで出来たことが本番でなぜできなかったのか、悔やまれるばかりですが、この後、千葉から札幌までスーツケースで運んだ締太鼓を肩に担いで素手で叩きまくり、一定のウケを得ることはできました。これは良かったことのひとつ。

ようやく本編に入って参りました

という感じで、今回は私がDJの現場で犯したミスについて書きました。

字数が5,500字を超えてしまったので、今回の記事はここまでにして、次回は、選曲やネタに込めた想いなどを書き連ねていければと思います。それでは次の記事でお会いしましょう。