アガイ研ブログ

Agai(堕武者+ultraviolence+)の個人ブログです。主に将棋、音楽、プロレス、レトロゲームについて書きます。将棋界では練習対局のために集まることを「〇〇研」と称することが多いことから、タイトルに名付けました。

クラブチッタ川崎の前から三列目で、少女理論観測所のステージを見上げながら学んだこと

昨日は「博麗神社うた祭り2022 in 東京」を観てきました。人気と実力を兼ね備えた7サークルが出演する、東方アレンジ界では最大規模のイベントです。会場のクラブチッタ川崎は最初から最後まで熱気にあふれていました。

川崎という街は、私のような将棋ファンにとっては、永瀬拓矢王座のご実家であるラーメン屋「川崎家」がある街であり、私のようなオールド野球ファンにとっては、今はなき「川崎球場」の跡地がある街でもあります(現在は富士通スタジアム川崎)。

この日の開場時間は15:00でしたが、プレミアムチケットを持っている人だけの先行物販が12:00からあったので、クラブチッタに12:00(クリアファイル3種購入)→川崎家に12:40(茎わかめが美味しかった)→富士通スタジアムに13:10(村田兆治さんの追悼企画展を鑑賞し合掌)→喫茶店で時間を潰し、14:50に入場列へ。という流れでした。

ライブ前の活力を与えてくれた、川崎家のチャーシュー味玉茎わかめラーメン。

出演7サークルにそれぞれ見どころがあり、観客の反応も含めて、書き留めておきたいことは山のようにあるのですが、ここではまず、一番印象に残った「少女理論観測所」さんの感想を記していきたいと思います。

【以下の感想には、わたくし堕武者Agaiの感情移入というか、自己投影している部分が多量に含まれます。なるべくサークル様に失礼にならないよう書いていきたいと思いますが、苦手な方はお読みにならないようお願いします】

思い入れの共有

「(博麗神社うた祭りという大きなイベントに)どうせ出るなら、その直前の秋例大祭で、最強の曲、最強のMV、最強のデザインのCDを作って、みんなにたっぷり聴きこんでおいてもらってから、その曲をチッタでやることができたらいい形になると思った」

第9回秋季例大祭で少女理論観測所が発表したシングルCD「ワンルール・ゲームチェンジャー」の後語りトラックにて、サークル代表のテラ氏が力説します。

テラ氏はTwitterでも、折に触れて自身の思い入れを語ってきました。

「ゲームは変わるし夢は続くんだ」「チッタに立つ夢が叶う瞬間を見届けてくれ!」「しょじょろん初チッタはこの日しかない、最高の記念日なんです」

一介のリスナーに過ぎない私にも、この日のステージに立つ思いが誰よりも強いことが伝わってきます。定型の宣伝文句ではない、迸る感情が文章から滲み出るプロモーションだと思いました。このくらいの裂帛の気迫で告知しないとダメなんだな。

最強の曲について

うた祭りに向けて書き下ろされたという楽曲「ワンルール・ゲームチェンジャー」の解説については、素晴らしいnoteを書かれている方がいらっしゃるので、是非ご覧ください。

note.com

私もCDを聴き、PVを観て予習した者の一人です。楽曲のクオリティの高さに感銘を受けたのは勿論ですが、ライブ向けに書き下ろされたというコンセプトながら、どのパートも(素人目には)超高難度に思えることに驚きました。

秋季例大祭でスペースにお邪魔した際に、テラ氏と短い会話をさせていただきました。

「これ、ライブでやるんですか?」

「ええ」

凄いなあ。聴く側も心して臨まなければ。と思いました。

最高の流れの中で

Hollow Masuerade、壊れた人形のマーチとシングルの名曲を繋げたあと、テラ氏がMCで改めて、今回のライブへ向けた想いを語ります。これが楽曲に並び立つくらいの素晴らしいMCでした。

そして「致死量の夜(テラ氏がボーカルを取る)」から「魔法少女theory」を経て(話の流れ上簡単な表記になりますが、いずれも素晴らしい歌唱と演奏でした)、ついにテラ氏が、少女理論観測所が思いを込めに込めた今回のライブのテーマ曲「ワンルール・ゲームチェンジャー」の番が巡ってきます。

テラ氏が事前に楽曲への想いを再三にわたって語ったことにより、フロアの側でも「ここから一段とギアが上がるんだな」と身構えたリスナーが、私を含めて多数いたことでしょう。

そこに神はいないのか

ボーカルの咲子氏が伸びやかに高音を歌い上げ、中域を艶やかに締める浮島氏との掛け合いからハモりへと遷移し、さあ、あの超絶技巧なギターフレーズへ――

というところで異変は起きました。

ギターから音が鳴らないのです。

フロア上のコンパクトミキサー、ギターアンプ、足元のエフェクターボードと動き回り原因を必死に探すテラ氏。スタッフ氏も加わってアンプ周りを急いで確認しますが状況は改善しません。

その間にも楽曲はイントロを終え、AメロからBメロへと進んでいきます。

この時のボーカル二人の掛け合いは本当に素晴らしく、掛け合ったりハモったりユニゾンしたり、一人がロングトーンを歌う間にもう一人は細かい歌詞を歌って併せたり、テンポの速いい遅いの切り替えも抜群に効いていました。

オブリ全開のベース、メリハリを支えるドラムもしっかり土台を固めて、アンサンブルとしてはこれ以上ない仕上がりだったと思います。

しかし皮肉にも、この曲とこの舞台に並々ならぬ強い思いを抱いて臨んでいるギターの音が入ってこないのです。

卑近な例を出して申し訳ありませんが、自分だったら耐えられないな、と思いました。

もし自分が同じ状況だったら、復帰を諦めて当て振りのまま最後までやり過ごすか、もしくは両手で×印を作って全体の演奏をストップさせてしまうか、どちらかだったと思います。そしてどちらを選んでも、ダメージを引きずったままでその後の演奏に臨んだことでしょう。心が折れていたと思います。

この舞台のために作った曲であり、この舞台のために作ったことを言葉にしてリスナーの心に届かせてきた曲です。準備にどれだけの苦労があったことでしょう。気持ちを盛り上げるのにどれだけの助走があったことでしょう。

なのにこの、一番大切な曲で……

ライブは本当に残酷です。ほんの1分前まで最高の流れが来ていたのに。

マーフィーの法則を例に出すまでもなく、トラブルとは常にそういう状況で起こるのかもしれませんが、それにしても運命を呪いたくもなります。

Show Must Go On

しかしテラ氏は違いました。根気よく機材チェックを続け、遂に2度目のサビから演奏復帰を果たしたのです。かかった時間は1分ちょっとくらいでしょうか。

サビ終わりで軽く謝る仕草を見せた後は、トラブルを感じさせない全力の演奏に戻ります。皆をハッピーな気持ちにする、ラストの「Mary Go, Merry Happy」まで一気に駆け抜けて、少女理論観測所のクラブチッタデビューライブは終わりました。

まさにこのツイート(引用元含む)の通りで、外野の余計な詮索は不要でした。

この後、テラ氏の姿はCOOL&CREATEのステージや、アンコールで全サークルが登場して歌った「廻れ幻想フェスティバル」で見ることができましたが、いずれも元気いっぱいにステージを駆けまわっていて、メンタル面の心配は杞憂であり、氏は今この瞬間を全力で楽しまれているのだなと思わされました。

伝わるということ

ライブを観覧した方々の感想をTwitterで拝読していても、テラ氏の、そして少女理論観測所全体のこのライブに懸ける思い入れというのは、十二分に伝わっているのだなと感じました。トラブルへのネガティブな評価は見当たりません。

テラ氏が音楽を続ける中で積み重ねてきた信頼が、トラブルに勝ったのだと思います。

私も一応パフォーマーの側なので、今回のライブからはとても多くの学びを得ました。

それは、熱と思いを込めて準備することの大切さと、思いを口に・言葉にすることの大切さです。そして、熱と思いが観客に伝われば、トラブルが起きても観客が減点の評価を下すことはないということも今回客席から体験しました。

私はライブ中やライブ後に「ここがダメだった、あそこがダメだった」と上手くいかなかったことばかり気になるタイプです。もちろん反省はパフォーマンスの改善のために必要ではありますが、それ以上に大事なのは、目の前のお客さんを喜ばせることです。そのためにはまず、自分自身が心の底から楽しんでいることを示すことだなと思いました。後悔しながらのプレイを、誰が楽しんでくれるでしょうか。

未来へ向けて

テラ氏はMCの中で、チッタで演奏するという夢は叶ったがこれで終わりじゃない、またチッタで演奏したいし、もっと大きな舞台にも立ちたい。と語りました。

そして、14歳のころは客席からステージを見上げていた自身が15年後にステージに立てたように、今日この客席の中にいるキッズの中に、将来このステージに立つ人がいるかもしれない、とも。

私はテラ氏より年齢がひと回り上のオッサンであり、現時点の堕武者グラインドがクラブチッタ600人のお客さんの前に立つ資格があるとも思いません。自分たちの出来る範囲で楽しくやりたいことをやるのが同人活動なのかもしれませんが、それでもキラキラ・ギラギラした燃える心は、僅かながらでも抱いておきたい。そう感じた昨日のライブでした。

少女理論観測所の皆さん、素晴らしいライブをありがとうございました。次回作・次のライブも楽しみにしています。

追伸

先ほど動画を紹介したMCの中で、テラ氏がZUNさんへの感謝・東方ファンへの感謝を述べた後に、ご両親へ感謝を伝えていたのが凄く良かったですね。大切なことであり、自分も見習いたい姿勢です。