アガイ研ブログ

Agai(堕武者+ultraviolence+)の個人ブログです。主に将棋、音楽、プロレス、レトロゲームについて書きます。将棋界では練習対局のために集まることを「〇〇研」と称することが多いことから、タイトルに名付けました。

受賞したので、公約通り街一番の高級店に行ってきた※突然挿入される回想まで

それは、昨年12月のこと。

連日Twitterで「この東方アレンジがすごい!2022」ユーザーアワードにおける、堕武者への投票お願いツイートを投稿していて、ふと思った。

touhougarakuta.com

「投票のお願いをするなら、選挙公約が必要なんじゃないのか?」

通常、選挙公約というのは、被選挙人が、自分に政治家としての身分を与えてくれたら、選挙人に対して、こんなメリットのある施策を取りますよ、と約束するものだ。

音楽サークルにとって、リスナーに対する公約とは何だろうか。

・「音源半額」「BOOTHで使えるクーポン発行(あるのかな?)」など、セール系。

・「特別音源発表」「記念ライブ開催」など、活動拡張系。

・「徒歩で自宅からビッグサイト秋葉原まで行く」「メイド喫茶メイリッシュのメニューを食べ尽くす」「24時間生配信」など、エクストリーム行動系。

色々考えたのですが、ちょうど「幻想Jelly Moon」のオープニングネタの台本を考えていた時期という事もあり、

youtu.be

やはり堕武者なら艶のあるネタにしたいな、と考える中で、風俗絡みのネタを思いつきました。

試しに「街で一番高い風俗に行ってレポートというのはどうだろう?」

と、バンド会議でメンバーに提案したところ

「そこは、街で一番ひどい風俗にいくべきだろ!」と即座にツッコミを受けましたが…

確かにそれはそうで、堕武者と風俗といえば、2012年に発表した「手コキババア紫 ザ・リアル」(ジャケット画像を貼っていたのですが、Twitterカードに大きく表示されてしまうようなので削除しました)。

撮影を快く許可してくれた、鶯谷デッドボールの店長氏に対しての恩返しもまだ十分には果たせていませんし、相当迷ったのですが……地を這うようにして稼いだお給金を投入するなら、まずは心の安寧を得たい。という、グラインドコアバンドにあるまじき安定を取った次第です。

それでも出ていくお金は1か月の食費ぶんくらいあるので、選挙公約に必要と思われる「身を切る改革」「体を張ったネタ」という条件は満たしているつもりです(誰に対する言い訳なんだろう……)

このようにして方針は固まったのですが、年末年始は仕事にコミケにDJや音源の準備に…と、あっという間に過ぎていき、気が付けば1月も下旬。「この東方アレンジがすごい!2022」の生放送から丁度一か月経ったこのタイミングで、公約を決行することにしました。

※おことわり

以下、風俗店に関する詳細な記述が頻繁に出てきます。なるべく品のある文章を心がけますが、苦手な方は「続きを読む」を押さずにお戻りください。

帰り道、たこ焼きを入れた袋を下げて通りかかったイルミネーション。我が人生が光で照らされることはあるのだろうか。もっと光を!

お店選び

「街一番の高級店」とターゲットを決定しましたが、私が住んでいる地区からほど近いエリアに、千葉県最大のナイトスポット「栄町」があります。今から60年以上前、かつて国鉄の千葉駅がこの地区にあり、周辺で漁業が盛んだったころは、歓楽街として栄えていたエリアだったそうですが、駅が移転してからは飲食店や商店が徐々に撤退していき、空いた店舗には風俗店が進出するようになり、現在の街が形成されていったそうです。余談ですが、私の出身大学のゼミで「栄町風俗歴史マップ」を作ったことがあり、OBとして現役生と一緒にお店を廻ったことがあります。

そんな栄町で一番の高級店はどこか。

栄町に少しでも詳しい人なら、まずは「李白」をイメージすることでしょう。

中国の王城のごとく聳え立つ外観は正に圧巻、長くこの地に居を構える老舗中の老舗です。料金は1枠110分62,500円が基本で、午前中だけ1枠90分41,500円という安価なコースがあります。(5年前は110分66,000円だったと思うのですが、安くなったのかな?)

ところで話が少し脱線するのですが、この手のお店はいわゆる「総額表示」をしていないことが殆どです。「李白」でも、ホームページには入浴料だけを表記し、「別途サービス料がかかります。詳しくはお問い合わせください」としています。なぜ価格を分けるのか、正確なところは分かりませんが、風営法売春防止法との関係があるのかもしれませんね。以前は「別途サービス料がかかります」の表記も無かった気がするのですが、時代と共に、阿吽の呼吸が通用しなくなってきたのかも。

それはさておき、私も「李白」が最有力と思っていたのですが、Twitterで最高級店として有力な候補をご紹介いただきました。

それが「The Rich」です。

正直、外観的には、清潔感はあるものの建物としては小ぶりで、「李白」のゴージャスさには及ばないものの、ホームページによれば、内装は高級シティホテル風でラグジュアリー感がありそうでした。

ホームページのURLも「rich2016」となっており、2016年=比較的新しいお店ということが伺えます。設備の新しさは、李白にはない魅力です。

価格はネットで検索したところ、総額は110分で67,500円、午前中最初の1枠のみ10,000円引きとのこと。67,500円なら李白より高く、正真正銘の「街一番の高級店」となります。

しかし、この2択は迷います。価格的にはそこまで差が無いので「李白」へ行っても企画がそこまで成り立たないわけではないだろう。そうすると、後は自分の内なる声を聴くしかありません。チャイナドレスか、否か――

結局この問題は「個人でコスプレを多数所有しており、リクエストに応えてくれる選手がいる」という理由で、「THE RICH」が選択されることになりました。

果たし状の送信

対戦相手が決まったら、果たし状を送る必要があります。

私が選んだ相手(以下、Y選手と記載)は、初見の選手からもEメール・Twitter・LINE(ビジネスアカウントだと思います)受け付けていて、今風だと思いました。

LINEで「氏名、電話番号、希望日時」を伝えたところ、10分ほどで返信が届きました。早い!口開け(その日、選手にとって一番最初の枠)の10,000円割引を狙って朝9時からの枠を希望しましたが、既に埋まっているとのこと。背に腹は代えられないという切迫感がそこまであった訳ではありませんが、こういうのは割引を狙って粘るよりは、行きたい時がタイミングなのだろうと思い、15時の部の確保を依頼。

すると了解の返信とともに、気になるトークが届きました。

「〇〇さんのお好みの衣装って、どんなのかなあ?」

「だいたい思いつくもの持ってますよw」

この選手のブログには不定期でコスプレ写真がアップされていて、特にキツネ耳と尻尾付の巫女さんの衣装がハチャメチャに可愛かったので、ぜひお願いしたいと思っていたのですが、無限の選択肢を提示されては心が揺らぎます。

一瞬、東方のキャラクターを依頼しようかとも思ったのですが、あまり今回の企画を東方に寄せると何となく生臭くなる気がしたので自粛。

代わりに、第二次成長期の私の趣味嗜好を大いに歪ませたキャラクターである、モリガン(ヴァンパイア)を依頼してみました。生唾を飲み込みながら返信を待ちましたが、

モリガン!!知らない!!」とのこと。すみません夢を見過ぎました。

それでも「キャラものだと、ラムちゃんくらいかなあ?」という補足情報に大いに心を揺さぶられましたが、結局は初志貫徹でお狐巫女さんをお願いすることにしました。

その後もY選手からは、お店の仕組みに関する詳細や、駅からお店への行き方など、痒いところに手が届く情報が寄せられてきて、さすが高級店の気の利かせ方だと感服しました。特に「この店では待合室まで選手がやってきて部屋まで案内する。しかし案内の前に待合室全体が暗くなり、その中で少しイチャイチャする」という、特徴的なシステムを先に知ることが出来たのはよかったです。心の準備ができた。

何を着ていく?

そして迎えた当日。

まず迷ったのは「何を着ていくべきか?」です。

私の普段の休日外出着といえば、ジーンズにパーカーが一般的なのですが、街一番の高級店には似つかわしくない気もします。さすがにドレスコードは無い気がしますが、第一印象が大事というのは、お店でも同じでしょう。

するとビジネスカジュアル的な何か、ということになりますが、自分が持っているジャケットやスラックスで高級店に太刀打ちできるか自信がない。結局、たまたまクリーニングから降ろしたての仕事用スーツがあったので、それを着ていくことにしました。ネクタイも迷ったけど締めます。一昨年のマジカルミライ(ボーカロイドのイベント)で買った、ミクさんカラーの勝負ネクタイです。我に力を!

ちなみにお店に到着して、待合室でそれとなく周囲を観察すると、諸兄たちはほぼ全員、パリっとしたスーツ姿でした。スーツでよかった…と胸をなで下ろすとともに、やはり高級店ともなると客層もハイクラスなのかな、と思いました。

確認の電話

Y選手からの説明では、予約時間の90分前までにお店へ確認電話が必要とのこと。

この手のお店では、一般的な仕組みです(後で確認したらSMSでも良かったようです)

自宅でバンド作業に没頭していると忘れそうなので、試しに朝10時に電話してみたところ「13時30分(90分前)にもう一度おかけください」とのこと。やはり、あまり早すぎてもダメなようですね。

よって13時30分にもう一度電話。するとボーイ氏いわく

「15時ちょうどのご案内になりますので、14時40分までにお越しください」とのこと。

HPには「予約時間の15分前にお越しください」と書いてあるので「あれ?」と思いましたが、到着できる時間なので特に申立などはしないでおきます。

これは自分の仕事の備忘録として書くのですが、時間に厳しいイベントの場合(この手のお店はとにかく時間厳守です、容赦なく予約を無効にされます)、HPと電話案内で、5分とはいえ齟齬が生じないようにしておいたほうが、無用のトラブルを防げるのになとは思いました。

結論から書くと、お店の待合室がとにかく快適だったので、HP表記より早く入店できたのは良かったですね。

闘いへの道程

ようやく服装も決まり、バトルコロシアムへ向かって出発です。

Y選手がLINEで丁寧に駅からの道を教えてくれましたが、実は地元なので徒歩圏です。

それでも私は方向音痴なので、Googleマップを開いて「お城(天守閣まであるお店があるのです)の斜め向かいだよな」と確認します。風俗エリアをスマホ片手にキョロキョロしていたら、キャッチの格好の標的ですからね。

こういうシチュエーションのとき、私は差し入れとして、道中で

・地元の美味しい焼き菓子屋さんのフィナンシェ

・コンビニで売っている女性用栄養ドリンク

のいずれかを買っていきます。小賢しいと思われるかもしれませんが、それほど高くない投資で、会話のアイスブレイクを果たすことができるので、重宝しています。

(前者は「甘いものが苦手でなければ…」と、前置きして渡すのがポイント)

本日の場合、出発ギリギリまでバンド作業をしていたこともあり、お菓子屋さんに寄る余裕がなかったので、道中にあるコンビニで「リポビタンファイン」を購入。これか「チョコラBB」の2択ですね。

入店時の逡巡

そんなこんなで入店。入口が道路に接しているビルなので、通行人から丸見えではありますが、変態紳士としての矜持を胸に、うつむきながらも堂々と自動ドアをくぐります。

受付カウンターまでの細い通路にはお決まりの消毒液があり、まずは手指を消毒。

カウンターの向かって右側にはモニター付き検温器があったのですが電源が切られており、体温測定はボーイさんが手に持つ非接触体温計で行われました。やや謎。

検温が無事に終わると、本日の総額、67,500円を支払います。カードも使えるとのことなので、楽天ポイント675ポイントを獲得すべきか一瞬迷いましたが、この手のお店はカード払いに手数料を上乗せすることも考えられるので、素直に現金で払いました。

ブログ掲載用に、「堕武者グラインド」で領収書を切ったら面白い気もしましたが、この突撃日記を読まれる可能性があるし、結局領収書を精算するのは自分なので、大人しくしていました。

入店事務が終わると、待合室に続く通路に案内され、段差のところで靴を脱いでスリッパに履き替えます。ボーイ氏の案内でカーテンをくぐり、薄暗い待合室に通されます。

ラグジュアリーな待合室

この待合室がとにかく快適でした。HPの動画でも確認できるので、ご興味のある方はチェックしてみてください。

サウナの休憩室を目いっぱい豪華にした感じです。

25畳ほどの空間には、縦3列・横4列にフルフラット式のリクライニング式ソファーが並びます。ソファー脇にはタブレットPCをセットしたサイドテーブルが配置され、後からここに飲み物も配膳されます。爪切りも置かれており(重要)うっかり自宅で切り忘れていても安心です。余談ですが、対戦相手への礼節として、爪切りは本当に重要です。やすり掛けも忘れずに。

ソファーの足元には荷物入れ用のカゴが置かれており、とりあえずリュックとコートを入れると、即座にボーイ氏がやってきて、無料でいただける飲み物のメニューを見せてくれます。

ソフトドリンクのみですが10数種類あり、ちょっとした喫茶店なみの品揃えです。

驚いたのはお高いレストランなどに置かれている高級炭酸水「ペリエ」があること。さすが高級店!即座にオーダーすると、氷入りのグラスと共に配膳されました。緑色の瓶からグラスにペリエを注ぎながら、将棋ファン的には、気分は将棋連盟会長でした。

そして、ここで初めて、ボーイ氏が配膳したお盆には、ペリエの他にもう一つ瓶が置かれていることに気付きます。

照明が暗いのでラベルははっきりとは読み取れませんが、栄養ドリンクのようでした。成分表示は読めずとも、こういうお店で配膳される瓶入り飲料にどのような効果があるのかは、おおよそ想像が付きます。

私も四十路を過ぎた我が身には自信がなく、アイテムに頼りたくなる気持ちはありますが、糖尿病・高血圧・高脂血症の自分が飲んでも大丈夫なものなのでしょうか。

男の自信を取り戻すことと健康管理のリスクを天秤に掛けましたが、やはり前者を選択してしまうのが男の哀しい運命(さだめ)。

目を瞑って一息に飲み干すと、まもなく胸のあたりが熱くなり、体が火照ってくるのを感じます。これは凄い!凄いけど、もっと直前に飲んだ方がいいのではないか?

動悸もやや激しくなってきたので、慌ててペリエの残りを飲み干しました。

一息つくと、サイドテーブルに置かれたタブレットが気になります。

そういえば、お店の紹介動画でも、ソファーで寛ぎながらタブレットをチェックするシーンがあったな。と思い出し手に取ってみると、様々なコンテンツが表示されていました。

・キャスト紹介(ボカし無し。HPでは顔出し無しか口元にボカしあり)

・アンケート(よく見るサイトなど)

・ソフトドリンクメニュー(追加ドリンク自由の記載あり)

・ルームの紹介

・系列店の紹介 など

ボカし無しで確認できるキャスト紹介にも惹かれますが、それよりも心躍ったのはドリンク飲み放題の文字です。ヨーシ!この店のペリエをぜーんぶ飲み干したる!(「プロレス・スーパースター列伝」より)これなら予約時間よりもっと早く来ればたくさん飲めたのかな。などと、貧乏性の考えることはいつも哀しいものです。

実際は、程なくお手洗いの利用を促され(高級店では一般的です。理由は後述)、席に戻ると予約時間となったので、残念ながら一杯しか飲むことができませんでした。

紳士が抱く悩みとは(1月24日追記)

話が前後しますが、待合室に通されて、まず最初にボーイ氏から渡されたのは、クリップホルダーに挟まれた、「本日のアンケート」という名前の進行表でした。

項目が結構多かったので、思い出せる範囲で書いていきます。

【希望するバトルフィールドに〇を付けてください】

・ベッド ・バスタブ ・マット

迷わず全てに〇。

【本日のスタイルは?】

・攻め ・受け ・流れでお任せ

事前アンケートに項目があると、毎回悩むこの質問。

攻めダルマと化して圧倒できるだけのスキルは持ち合わせていないし、あまりに受動的だと110分の長丁場では途中で飽きてくるので、お任せを選択。

【施術を望まない技はありますか?】

・あくまのキッス ・したでなめる ・すいとる ・ころがる ・スキルスワップ

・レオパルド2

特に嫌うものはないので、無記入。

【本日の元気度は?】

・1 ・2 ・3 ・4 ・5

元気度とは何か?予想回数のことか?それとも文字通り、元気かどうかを5段階で自己評価するのだろうか?自己評価1の人はそもそもここに来るのだろうか。自宅で安静にしていたほうがいいのではないか。対戦相手も気を遣うであろう。

ここまでは、少し逡巡しながらもスムーズに書いてきましたが、次の質問に手が止まる。

【選手の服装はいかがしますか?】

・生足 ・ストッキング ・ガーターベルト

この質問に悩まない漢がいるだろうか。

「巫女さんスタイルだと本来は生足一択か?いやしかし赤い袴から黒いストッキングが覗く絵はきっと映えるだろう。でも脚単体で考えたら僅差でガーターが好きなんだよな。待てよ待合室ではお店の制服で合うルールなんだよね。あのバブリーなミニスカ制服に合うのはストッキングか。それともガーターベルトか?むしろ両方という選択肢はないのか?YouTubeショートやTikTokで散々出てくる裏技「一蘭で青ねぎと白ねぎの間のナカグロに〇をすると両方入れてくれる」みたいな。しかしその分、バトルルームに入室してからの着替えが長引き時間を消費する可能性もあるし…うーむ…」

如何なる哲学者でも容易に答えを導き出せない問いに、ボールペンを持つ手も止まります。

結局、悩みに悩んだ末、ガーターベルトを選択。巫女さんにガーターが合うかは未知数の賭けですが、少なくとも制服にはマッチするはず。しかし後で選手に「和装を頼んでおいてガーター頼む奴wwww」とか一笑に付されたらどうしよう。でも、いろは(サムライスピリッツ)だってニーハイをガーターで留めていたはず…いや、それはガーターベルトなのか?調べたらソックスバンドというのもあるらしいが云々」

スマホで「ニーハイソックス とめるやつ」と検索ボックスに入力した辺りで我に返りました。

衝撃の「まず待合室で」システム

この項から徐々にサービスの核心部分に触れざるをえなくなっていくので、どう表記したものが逡巡しながら書いております。

それはさておき、15時の予約時間ちょうどになると、ボーイ氏から「まもなく選手入場です」との耳打ちが入りました。

Y選手からのイントロダクションでは、まず待合室で女の子と待ち合わせ、少しやりとりがあってから部屋に案内されるシステムだったな。と思い出すも、しかしやり取りとは何だろう。ソファーごとの仕切りがなく、ソファーとソファーの間隔が70㎝くらいしかない空間で、まさか実戦が始まるとも思えない。少しお話するくらいなのかな?などと考えていると、部屋の明かりが消され、周囲に何があるかが分かる程度の暗さとなりました。

これが合図か、と振り返ると、部屋の入口に白い人影が現れます。

白を基調としたジャケットとミニスカート(HPの動画で見られます)に身を包んだ選手が、ゆっくり部屋の外周を廻りながら、一番左前の隅に座っている私の方へ向かってくるのが分かります。ソファーの前を横切るたびに丁寧に紳士たちへ会釈を重ねながら、ついに白い人影は、私の前で立ち止まりました。

私の耳元に顔を近づけ、囁く声で名乗りを上げます。

「はじめまして。Yです。今日はよろしくお願いします」

ついに来た!芸能人に詳しくないので例えが浮かびませんが、たれ目がチャームポイントの、可愛い系の淑女が本日の対戦相手と判明しました。

名乗られたからには名乗り返すのが武士の礼儀です。

「あ、どうもはじめましてナカタニです」

そう、昨年の麦酒夜宴をご覧になった方はご存じかと思いますが、私のリングネームはナカタニなのです。部活時代に尊敬していた先輩から拝借した名前でありますが、先輩が遊び好きということは一切ありません。今更ながら申し訳ありません、先輩。

youtu.be

先輩元気かな、結婚式に出たのはもう10年近く前か…などと思い返す間もなく、次にY選手から発せられた一言に背筋が伸びます。

「<あくまのキッス>してもいいですかぁ?」

 

【お詫び】以降、センシティブと思われる名詞や動詞、副詞、連体詞、形容詞、形容動詞などは、全てゲームの技名から拝借させていただきます。もしくは擬音やオノマトペのみで表記させていただきます。ご容赦ください。

 

「ここで?」と思いました。

何しろ待合室のソファーはほぼ満員で、私の横にも後ろにも斜めにも人がいるのです。部屋は照明が落とされたとはいえ、周辺の状況は遠くまで十分に視認できる明るさは保たれています(だから先ほど選手の動向を目で追えたのです)。

しかし、「待合室でちょっとイチャイチャしてから部屋へ行く」システムに従うことを決めたのは他ならぬ自分です。ここはグラインダーとしての胆力が試されていると思いました。

交歓が終わり、じゃあ部屋へ行くのかな、とソファーから腰を浮かそうとすると、

「あ、そのまま横になってもらってもいいですか?」と言われ、リクライニングシートに体を預けるように指示されます。戸惑いつつも従うと、次に発せられた一言で一気に緊張が走りました。

「じゃーあー、うえにのってもいいですかぁ?」

 

ここで!?と思いました。

先述のように、我々の様子は周囲から丸見えなのです。

イメージしやすいようにハッキリ言ってしまいますが、間仕切りがあって部屋が暗いピンクなサロンのほうが、まだプライベートが保たれていると言える状況です。

しかしこの状況で、「いやそれはちょっとどうかと思いますよ」と反論できる論客がいるでしょうか。

以下、全盛期のヒクソン・グレイシーに対する高田延彦ばりにマウントポジションを許してしまった私は、パウンドの連打の代わりに<すいとる><ボディプレス><ブレストファイヤー>などの乱打を浴びてKO状態に。

意識が混濁する中、「じゃあ、おへやにごあんないします♡」の一言で我に返った私は、若干前かがみになりつつ、ヒクソンに腕を引かれながら、恐らく私が醜態を晒していたであろう観衆の脇をすり抜け、エレベーター入口へと向かったのでした。

話は突然遡りますが

皆様は、堕武者がM3-2020秋に頒布したオリジナルミニアルバム「現状報告」を覚えておいででしょうか。

youtu.be

5曲目に「不如意棒のブルース」という、性的不能をテーマにした楽曲があります。

少し長くなりますが、前半の歌詞を引用します。

王道ゆくなら シルデナフィル 
あすかの名を持つ タダラフィル 
韓国産まれの ウデナフィル 
男の自信を 取り戻すんだ

加齢にストレス高血圧
理由は大抵思い当たるけど
四十の手前じゃ仕方がない
ここは科学に頼っちまいな

人生すべてが下り坂なのか
体力持たない 気力もない
役には立たない自律の神経
仕事ができない海綿体 GO!

エロ動画すらも最近見てない
気付けば半月握ってない
弾切れ起こした男性ホルモン
錠剤飲み込み 喝を入れるぜ

勘の良い方、というか、堕武者の創作姿勢に慣れてきた方にはお分かりかもしれませんが、これは堕武者Agai自身の経験を表しています。

シルデナフィルタダラフィル、ウデナフィルというのは全て、勃起不全の治療薬です。

数年前、勃起不全を友人に相談したところ「こういう薬があるよ」と紹介してくれました。

薬を処方してくれそうな病院を自宅の近所で探し、問診や諸々の検査を経て、タダラフィルを処方してもらい、服薬指示どおり試合開始の1時間前に飲んで臨むと目覚ましい効果が!特に目立った副作用もなく、友人には本当に感謝です。

私の勃起不全は、最初から刺激に無反応だったり、勃起しても射精に至らないという単純な不全ではなく、少し特殊です。

・刺激には反応し、勃起は可能
・勃起後に刺激を与え続けると、射精に至ることは可能(通常5分程度)
・なので自慰では毎回射精
・射精感を感じた際に「まだもったいない」と耐えると、射精感が去っていく
・一度射精感が去ると、刺激を与えても二度と勃起しない

ネットで調べてみましたが、この症状について詳しい解説に出会ったことはありませんでした。
解決策として薬局に売っている高い栄養ドリンクを飲んだことはありましたが、最初の刺激には反応しやすくなっても、一度射精感が去ったあとの再起動には効果がありませんでした。

実はこれは30代半ばから直面していた問題です。
この問題のせいで、幾多のアタックチャンスを逃したか分かりません。

試合開始当初はあれだけ好反応だったのに、中盤を過ぎてからウンともスンとも言わなくなる我が司令塔を目の当たりにして、対戦相手の反応は様々でした。

「えっ、何で?」
「こんな人はじめてだヨ!〇〇〇〇〇(以下スペイン語で聴き取れず)」

という、ごく正直な反応もあれば、

「こんなこともあるよ、人間のすることだし」
「また会える理由ができたじゃん!」
「大体反応の仕方は分かったから、次は任せてよ」

という、心に沁み入る一言をいただくこともありました。
多分、一定以上のグレードのお店には「相手がダメだった時に掛ける言葉」の指導があるのでしょうが、こういう時にその人の人間性が出るな、と、涙で濡れた顔を伏せながら思ったりもしました。

中でも鮮烈に記憶に残っているのは、天守閣まで備えたお城のような外見が有名な某店でのあとしまつの出来事です。
吉原の人気嬢が千葉へレンタル移籍!というニュースが紳士ネットワークで流れ、意気揚々と対戦相手に名乗りを上げた私は、最初の発射感を堪えた後で二度と得点圏にランナーを進められず、嬢の緩急自在・多種多彩な技を前にしても何ら反応できませんでした。杭打ちが得意な選手なのに、数回で外れてしまうほど芯が通っていなかったです。

気を使ってもらい、攻守を変えてみたり、途中でストレッチを入れてみたりしてもダメでした。

深い絶望の底に陥った私は、せめて自分が存在した証を残そうと、嬢に頼み込みます。
「お店のブログでは、絶倫だったことにしてもらえませんか?」

翌日、涙で枕を濡らしながらスマホでチェックすると
「昨日来てくれたお兄さん、マ〇ト2回にベ〇ド2回凄かったです。会いにきてくれてありがとう、また来てね」
(特に放送禁止用語でもない場所に伏字を入れるのは業界の作法です)

なんていい子なんだ…と心が少し明るくなったものの、俺は嬢に何を書かせているんだと、改めて落ち込み直す結果となりました。

話が前後しますが、上記の症状を性病科の医師に相談したところ、解決策としては通常の勃起障害改善薬でよいとのことでした。
先に紹介した勃起不全の改善薬3種、いずれも試しましたが、私にとっては特に副作用もなく、それでいて効果は抜群でした。

以前の私であれば「まだ開始5分しか経っていないのに暴発できない」「でもここでヤマを越えたら一生再起できないのでは…」と、二律背反に苦しんでいたところですが、
「この後でも、終盤必ずチャンスは巡ってくる」と、一旦引ける余裕を持った時の心強さといったら!長年の呪縛から解放され、晴れやかな気分でした。

男の自信を取り戻すというのは、こういうことかもしれません。

メンタルヘルス上も、不安の種がひとつ取り除かれて、心の管理が楽になった感覚がありました。

以来、私は連戦連勝を重ね、性豪街道を驀進……できなかったのは、「東方糖尿闘病奇譚」に書いたとおりですが、糖尿病の治療も一応順調に進む中で、今回の「街一番の高級店へ突撃」へのゴーサインを(自分でですが)出したという経緯に繋がります。

そしてこの日も、私は理想的な出塁を重ね、確実に得点を積み上げていきました。

―残り20分の惨劇が起こるまでは。
(1月25日7:30、記述ここまで)