ADHDが札幌へDJしに一人で旅行してみた【選曲編・その2】
更新が遅くなり申し訳ありません
こんばんは。なかなか遠征本編の話に入れませんが、それだけ語りたいことが沢山あるんですよね。今回は、東方鋼鉄狂における私の出番の冒頭を彩ってくれた、SE動画について語りたいと思います。
DJでもライブでも、なぜ冒頭が重要なのか
まずはこちらをご覧ください。(既にTwitterでご覧いただいている方、ありがとうございます)
ライブやDJの出演が決まると、私はまず最初に冒頭の展開を考えます。
いわゆる「掴み」は、舞台芸術において個人的に何よりも大切だと考えておりまして、ここで観客に「今日の出し物は面白そうだ」と信頼を得ておくと、その後の展開がだいぶ楽になるからです。
楽になるというのは、具体的にいうと舞台で起こる出来事に対して好意的になっていただける、舞台での動きや意図に注目していただけるという意味です。
また、舞台冒頭というのは、舞台の中でもっとも「何が起きるか分からない」という状況に自然となっている状態なので、一挙手一投足に注目してもらいやすく、観客の感情を動かしやすい。という好条件でもあります。
その意味でも、出し物の冒頭に拘るのはコストパフォーマンスが非常によいのです。
堕武者を知っている方が多い場において「今回も何か滅茶苦茶で面白いことをやってくれそうだ」という信頼を得ることも重要ですが、堕武者のことを知らない方のほうが多い、名前は知っていてもどんなサークルかは知らない方が多い場においては、あいさつ代わりに「私たちはこんなサークルです!」という最初のアピールの場になるので、より重要だといえます。
今回の「東方鋼鉄狂」の舞台は正に後者だと考えられるので、冒頭に何を持ってくるかは特に重要でした。
最初の冒頭ネタは実は違うものだった
と、ここまで偉そうに掴み論を騙りましたが、実は今回の冒頭ネタに辿り着くまでは紆余曲折がありました。
というのも、最初に思いついたネタは本番とは全然違っていたからです。
最初に考えたネタは、堕武者のボーカル・Kimが、気仙沼出身のポテンシャルを活かして、朴訥とした東北弁で、キラキラ輝くDJたちへの嫉妬と、堕武者の活動の卑下を語るというものでした。
(以下原稿。Kimの校正を得るつもりだったので東北弁は適当)
「ああ、こわいなあ。おっかないなあ。
オラはね、ちゃんと止めたんです。都会に出てDJなんざやるの、やめておけって。
オラたち堕武者が、ネオン輝く札幌のクラブでターンテーブル弄ってみたってさ、だーれもオラたちのことなんか見てくんねえ。恥かいて帰って来るのが関の山だ。
都会のDJでウケるためには、なんだべあのおっかない、え? スンフォニッグブラッグメダル? あんな音楽を演奏しているサークルでないとだめなんでねえの。
オラたちみたいな田舎者は、スタズオノア秋葉原のボーカルブースで、センズリでもこいていたほうが身のためだ。
ああ、こわいなあ、おっかないなあ……」
東北弁で「スンフォニッグブラッグメダル」と言うのが面白い気がして、最初はこちらを採用するつもりでした。
ただ、
(1)ややウケは取れても爆笑は難しいかもしれない、という自己判断
(2)下ネタが入っていないのは一部視聴者の期待に応えていないのではないか? という疑問、そして
(3)今回のライブならではの内容を盛り込みにくい
という懸念があり、考えた末に見送ることにしました。
舞台は常に一期一会
特に(3)が重要です。
よくロックスターがライブで「いくぜ〇〇!」と、その土地の名前や会場の名前を挙げて叫ぶのは、このライブはツアーと言えども一回一回が特別で、今日のライブはここに来てくれたあなたのために演奏しているんですよ、というメッセージを送るためだと考えられます。
ただ言葉で呼びかけるだけでは若干の薄っぺらさがあるかもしれませんが、舞台本編の中で地域や場所の特殊性を取り上げることで、より「この日のために練られた舞台である」という印象を観客に与えることができます。
堕武者でこれを採用したのは2013年に大久保水族館で行われたライブの時です。
ステージがぐるりと水槽に取り囲まれ、色とりどりの魚が泳ぐという、一度見たら忘れられないレイアウトが特徴的なライブハウスですが、会場の下見に行った際にこれはSEに採用すべきだと考え、淫乱なお姉さんに「水槽の上で私を犯して!熱帯魚の交尾みたいに!」と叫んでいただきました。
この時の声優さんもそらまめ。様です。本当にいつもありがとうございます。
また、最近の堕武者の舞台で言えば、
2021年8月の麦酒夜宴→会場の早稲田茶箱のトイレで連日客がファックしている、と勝手に認定
2022年5月の麦酒夜宴→会場の荻窪RoosterNorthSideに、これからAgaiの婚約者がやってくると宣言して大騒ぎ。また、共演者のkisekilay様に「ユニットに僕を入れてください」と絡む
などの手法を採用しています(ありがとうございます)。
下ネタには安定と信頼がある
先ほど挙げた(2)について、何も「堕武者である限り必ず下ネタを使わなければならない!」という呪縛に囚われている訳ではないのですが(実際、2022年5月の麦酒夜宴では直接的な下ネタを使いませんでした)、現場において下ネタはやはり強力な味方です。具体的には下記のようなメリットがあります。
A.笑いの共通項として深いコンセンサスがあるため、笑いの沸点が低い。
B.社会通念上おおっぴらに言ってはいけない事なので、それで笑う観客との共犯関係を築きやすく、以後の展開で笑いを取りやすい。
C.普段下ネタに無縁の場所・人と組み合わせることで、意外性が生まれる。
(3)との関係でいうと大事なのはCで、観客にとって予想外のコラボを生むことができるのは、やはりシャープな下ネタなのです。
お名前仕様の許諾をいただいた主催者・共演者の皆様ありがとうございました
そんな訳で今回の冒頭SEでは、共演者の皆様を下ネタに巻き込ませていただくことになりました(どう巻き込んだかは、ぜひ冒頭に掲載した動画をご覧ください)。
実は、先述したように最初は違う案を考えており、その際にも共演者の方々のお名前を使わせていただくつもりだったので(これだけすごいDJ陣がいるのだから、田舎者のお前が共演するなんておこがましい、と言うつもりでした)結果として2度に渡り諾否をお伺いすることになってしまい、お手数をお掛けして申し訳ありませんでした。
皆様にはご快諾とともにご期待もいただけたようで、本当に有難い限りです。「声優さんに名前を読んでもらえるのは貴重な経験でした」とのご感想もいただき、やはりこちらのネタを採用して良かったと思いました。
ボイスを収録していただいたそらまめ。様ありがとうございました
そして、毎回堕武者の無茶な要求にも素晴らしいクオリティで応えていただいている、声優のそらまめ。様、今回も本当に感謝です。
実は、当初の台本ではセリフの量と指定の尺が釣り合っておらず、持ち時間内に収める必要がある関係で、だいぶ短めにお願いしてしまいました。
そらまめ。様からは「この量でこの尺だと、これだけ早口になってしまいますよ」という例示の意味合いでサンプルを頂戴したのですが、そのサンプルがスピードの中にも抑揚があり、ヒステリックな中にも分かりやすさがある素晴らしい内容でした。
動画で字幕を付ければ意味も完璧に伝えられるだろう、ということで、そのままOKテイクにさせていただいた次第です。エモーショナルかつ技術が詰まった、素晴らしい淫語マシンガンをフロアに浴びせることができて、本懐を遂げたと感じました。
会場の地の利を生かすことができた
冒頭の動画ではフレームに収めていないのですが、実は会場となった札幌CLUB ANiMAにはDJブースの背後以外にもう一台プロジェクターとスクリーンが用意されており、DJブースに向かって左の壁に設置されていまいた。
DJブース背後のスクリーンはDJやDJ台が被ってしまい、スクリーン全体を視認するのが難しいのですが、これなら存分にスクリーンで動画の字幕をご覧いただけると判断したのも、早口のサンプルをOKテイクとさせていただいた理由のひとつです。
と同時に、DJ本編でも、私がいままで培ってきたパワポ芸で勝負しようと決断した理由でもありました。
CLUB ANiMAは音響も素晴らしかったので、また訪れたい会場ですね。
アコギを爪弾いたボスさんありがとうございました
「東方鋼鉄狂」は、東方Project楽曲のアレンジ曲を流すイベントなので、オープニングSEにも何らかの東方要素が必要と私は考えました。
他方で、SEの性質上、私ことAgaiが収録ボイスと掛合いをする関係上、ボイスが特定の東方キャラクターのものであると設定することは避けたいなとも思っていました。
そこで考えたのが、ボイスのバックで東方楽曲に基づくBGMを流すことです。
最初は、「輝針残酷物語」の6曲目に収録した「俺の不浄なお祓い棒」で使用したアコギを流す予定だったのですが、堕武者のギター担当・BossさんはこのSEのためにギターを新録してくれました。結果として、フロアに哀愁と不条理をもたらす、よりよいものに仕上がったと思います。ありがとうございました。
次回は札幌道中ズンドコ編!
という感じで、今回は冒頭SEの意図と制作舞台裏を説明させていただきました。
次回は一旦旅路のことを書かせていただきます。ADHD中年男性が、必死に旅程を遂行しようとする様をお楽しみください。